商店街の未来を語る 麻布十番座談会
近年、目まぐるしく変わっていく麻布十番商店街。これからの麻布十番商店街を担う若い世代の皆さんは現状をどうとらえているのでしょうか。そしてこれからどんな街を目指すのか、平野理事長と語り合いました。
◆出席者(左から)
日永祐樹さん:昭和3(1928)年創業「たぬき煎餅」の4代目。他店で働いた後、2023年に家業に就く
西本千春さん:明治42(1909)年創業「西本洋品店」取締役で5代目。2児の母
平野一夫さん:麻布十番商店街振興組合理事長。平野屋紙文具店3代目店主
平井香子さん:麻布十番在住。商店街のイベントや子ども食堂にボランティアとしてかかわっている
堀井良光さん:創業234年「更科堀井」販売部部長で10代目。サラリーマンを経て、2024年に現職
多様性と秩序、古いものと新しいものを併せ持つ商店街
――麻布十番商店街の現在の姿をどう見ていますか。
日永 麻布十番商店街は、国内のお客さまと海外からのお客さまのバランスが取れていると感じます。海外のお客さまも皆さん商店街を楽しまれている印象です。
西本 海外のお客さまが来店されない日はありません。近隣小学校の指定品を扱っていますので、入学シーズンは特に多くの国のお客さまがいらっしゃいます。
堀井 街は「住む人」「来る人」「商う人」で構成されていますが、その求めるものが多様になっています。私は生まれも育ちも麻布十番です。子どものころは下町というイメージでしたが麻布十番のブランドが高まり、それにつれて街に来る人も増えました。求めるものが細分化されたため、高単価、高付加価値なものを商う人が増えています。麻布十番の物語が多様化しており、サラリーマン時代この街に「来る人」として外からの視点で見ると不思議な感覚になったものです。私はこれをポジティブにとらえています。
平井 麻布十番に10年住んでいます。住まいを探すときにさまざまな商店街を見ましたが、商店街にも「生きている商店街」と「死んでいる商店街」があると感じます。麻布十番商店街はまさに「生きた商店街」。海外の方が商店街の通りを見て「なんてきれいなんだろう!」と驚いていましたが、そのとおりだと思います。
堀井 この商店街はどんな人のどんな物語も受け入れる、いわばカオスな街ですが、それでも安全性や清潔さなどの秩序が保たれています。それが「住む人」「来る人」「商う人」に安心感をもたらしている。カオスと秩序がこの街の強みでもあると思います。
平井 女性が夜1人で歩いていても、危険を感じないのは素晴らしいことだと思います。
平野 どんなに流行っていても、決して繁華街ではない。商店街なのです。歴史ある商店街ですが、歴代の先輩方がそれぞれのカラーを出して変化させながら、昔の良さも守り続けてきました。皆さんや私がそうであるように、一度外で働いてまた戻ってきた人の経験や視点も生かされています。いつの時代も新しいものと古いものが同居していて、それがお客さまがホッとできる要因になっているのではないでしょうか。「生きている商店街」であり続けられるかは、若い皆さんがどう受け継いでくれるかにかかっています。
西本 先輩方のおかげで、商店街の信用やイメージを失うことなく何十年と受け継がれているのがありがたいですね。お客さまも「こんにちは」と店に入ってこられたり、整然と並ばれていたりと、マナーもいいんです。
日永 大使館が多いこととも関係していると思いますが、海外のお客さまのマナーもいい。この品の良さは守りたいですね。夜の街にはしたくないと思っています。
みんなで商店街をつくっていく
――一方で課題があるとすればどういうことでしょうか。
日永 商店街は建築ラッシュです。「平日ドリルの音が聞こえない日はない。変わったわね」と言われるお客さまもいらっしゃいます。
平野 古き良き街並みは変わってきていますが、それはやむを得ないこと。ただビルに建て替えてもすべて人に貸すのではなく、なるべく上に住んでほしいとはお願いしています。
堀井 私が課題と感じているのは組合の運営です。平野理事長をはじめ、皆さん自分の商売の時間を割いてでも地域に貢献されており、そういう方がいて商店街は成り立っています。地域に貢献することがいずれ自分のビジネスにかえって来るのです。新しい視点が加わる意味は大きいので、この街で新たに活躍している方も積極的に参加してほしいと思います。
日永 私は青年会に参加して、主に子ども向けのイベントなどを企画しています。一緒にやってくれるメンバーも募集しています。
西本 青年会は、節分やハロウィン、餅つきなど四季折々のイベントを企画してくれていて、子どもたちも喜んで参加しています。小学生も年々増えているので、ここで子育てしたいと思える街、大きくなっても住み続けたいと思える街にできるといいですね。
平野 子どもたちが育っていくのを見守る商店街でもありますね。それだけでなく、高齢者や海外の方もたくさん住んでいらっしゃいます。地域全体を巻き込んで、さまざまなお客さまを迎えられる街、そして頼られる街にしたい。そのためにも、この商店街を思う気持ちのある組合員を増やしたいと思っています。
堀井 子育て世代も、単身者も、外国籍の方もいるという究極の坩堝(るつぼ)がこの街の理想です。世帯ごとにいろんな物語があるので、ジャンルのない街になっていくでしょう。そこで商店街の全構成員一人ひとりが商店街をつくっていくことを自覚して行動するのが目指す姿です。リソースには限界があるので、新しいメンバーの参画が必要です。歓迎しますので、ぜひ一緒にやっていきましょう。
日永 そして、「日本の商店街と言えば麻布十番商店街」と言ってもらえる街にしたいですね。古き良き伝統を守りつつ、新しいことにもチャレンジしていきます!
「麻布十番青年会へご興味ある方はコチラ!」
https://www.facebook.com/azabu10seinen
(文中敬称は略しました)