―川口商店の創業はいつ頃ですか。今と品揃えなどは違ったんでしょうか
麻布十番のこの場所に開店したのは昭和20年だけど、その前は別の場所にあって、
私は3代目なんで、開業した年ははっきりとはわからないです。
父の代では鋸(のこぎり)の目立て(ヤスリで鋸の刃を鋭くする)をやっていたので、
大工道具の販売がメインでした。
鋸の目立てを私の代でやらなくなって、昭和39年から始めた合鍵が主力になりました。
日曜大工が華やかな時代(昭和40年代頃)は、家庭塗料、棚板などがよく売れました。
―歴史があるだけに忘れられない出来事も多いのでは?
少し前まで、家庭でおせち料理を作るのが当たり前で、正月3が日は店がすべて休みだった。
ある大晦日に、お客さんが399人来たことがあってね。
食事もろくにとれなかったし、商品も間に合わなかったけど、あれは忘れられない。
今は元日から開いている店もありますからね。
―ライフスタイルや世間の慣習が変わっのたんですね。十番もずいぶん様変わりしたのでは?
今はネイルサロン、まつ毛サロン、それにマッサージのお店が増えました。
昭和60年代は地上げで駐車場だらけになって、 駐車スペースのラインを引くペンキがすごく売れたこともあった。
日曜大工が華やかなりし頃(昭和40年代頃)もペンキはよく売れたけど。
その駐車場は今、全部ビルになって、住居はほとんど賃貸だよね。
だから家を自分でリフォームする人も少なくなってしまって、 ペンキも家庭用品も今は売れ筋じゃなくなった。
それに、ホームセンターで買うようになってきたこともある。
―売れ筋が時代で移り変わったと…。今は競合がホームセンターになんですね。違いは意識しますか
ホームセンターは面積当たりの利益優先で、
多品種を少量ずつ、長い期間をかけて売っていくのは苦手な分野で。
うちには半年、1年、3年に一つしか売れない物もある。それでも揃える。
それと専門知識のある店員さんばかりじゃないのも違うでしょう。
―客層もまた変化しましたよね
昔は建築現場で木材を切ったけど、今はすべて用意してから現場で組むようになって、
大工さんなどの職人さんが減ったね。
食事を作らない人も多いから、こういう(店頭の包丁)日本の立派な包丁を買うのも、
今はアメリカやヨーロッパそして南アフリカなんかの外国の人か、日本人では高齢者の方です。
―建築方法も影響をしている。大使館も多く、六本木も近いから十番は国際的ですよね。そんな街にあって、店づくりでこれから変えようと思うところはありますか
海外からのお客さんに英語で商品説明をしたいし、
色んな国の人と話すのに、少しでも言葉がわかるととたんに場が和むんですよ。
だから語学を勉強したいとは思ってます。
―5年後10年後のお店がどう変わるか楽しみです
川口商店
刃物からワイヤーロープ、家庭用品など多彩な品ぞろえでテレビ制作やイベント関係にもおなじみ。店主の川口 祝弘(かわぐち ときひろ)さんは、お休みには、PCを駆使してお得で豪華に海外へ出かけている。ハワイへはなんと10年間に11回。最新のトレンドスポットにも詳しいフットワークのよさには驚かされる。
麻布十番2-4-2 TEL:03-3453-7736
10:00~19:00火曜休
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