―魚可津は魚料理のお店ですが、創業した時は鮮魚店だったそうですね
昭和初期にできた小さな魚屋さんでした。僕が麻布十番に来たのは20年以上前の二十歳の時で、飲食店を始めたのは15、6年前。最初は魚屋に併設していたのが、その内にスーパーが目の前にでき、家で料理をする人が減ってという時代の流れがあって飲食店に。最初は素人の居酒屋って感じでした。
―今はランチタイムに行列ができる人気店ですよね。理由はどこにあると思いますか
魚屋がやっている飲食店っていうと、新鮮でおいしいイメージがあるでしょ。実際に飲食店と魚屋では仕入れのスタイルから違う。飲食店はファックスや電話のやりとりが多いけど、うちは70年くらい魚屋として付合いがあって、毎日トラックで行って、仲買さんと世間話してっていうのが続いてるから、質のいい魚を安く買える。適正な価格でおいしい魚を食べられるのが理由じゃないかな。
―飲食店としての魚可津はどんなお店にしようとスタートしたんでしょう?
新鮮な旬の魚のおいしさを知ってほしいというのが最初にあった。それに十番には高級店が多いけど、お客さんはお金持ちも、そうじゃない人もおられるので、色んなお客さんが来れる店にしたくて。あえて丁寧な接客はしないし、高級店のかしこまった雰囲気はないけど、麻布十番で食事をしたというある程度の満足感はもてるというそんな位置づけの店ですね。
―正木さんは麻布十番商店街の青年会会長として本公式サイトの制作チームにも参画され、またMV「HAPPY AZABU10BAN」を仕掛けたり、築地での動画入りホームページを作ったり、新しいかたちのPRをしている印象です
「HAPPY~」は、原宿版を見て、麻布十番でやったら楽しそうじゃん!ってことで、青年会のメンバーに声をかけて作りました。ホームページ(以下HP)の動画は、カメラ買ったからちょっと撮ってみよう、で、せっかくだからYOU TUBEにアップしようっていうノリで。HPは、もし自分が知らない街に食事に行くなら、事前に情報が欲しい。それでどうせ作るならちゃんとしたものにしたいから、毎日更新します。するとお客さんも増えてメリットがいっぱいある。だから商店街も時代に合わせた方がいい。ボランティアもフェイスブックで呼びかけて集めたり、便利なものは役立ててどんどん使ってます。
―麻布十番商店街の新世代という感じですね。魚可津はこれからどんなお店にしたいですか
よく、「流行ってるんだから、店広げなよ」と言われるけど、自分に余裕がなくなるからそれはやりたくない。お客さんとはもう知り合いだから、若者からお年寄りまで知っている顔が集まる店がいい。お客さんも知り合いの店と思うと安心できると思うし。店づくりは、いつも自分を基準にしてるんです。
―確かにそういう店に行きたくなりますよね。では麻布十番の今後について聞かせてください
地元の住人がいない街にはしたくないよねと商店街ではいつも言ってます。地元の住人がいない街は荒れる。十番もそっちへ傾く土台はできている。そうならないようコミュニケーションを大事にしたい。例えば毎月なんかイベントをやれば、知らない店でもチラシを持って毎月通ったら、いいかげん顔を覚えてもらえるじゃないですか。すると新たにつながりができ、なにかあったときも話がしやすくなるでしょ。僕は宮城の石巻出身で、震災後それを口に出すことが増えて、いつのまにか同郷のネットワークができて、力ができた。この街だっていつ震災でばらばらになるかもしれない。でも地元の人がつながっていれば再建できる。それには新しい人を受け入れて、色んな人とつながれるイベントがやりたい。麻布十番は国際的な街でもあるんだから。
魚可津
毎日市場に出向いて仕入れた新鮮な魚料理をメインに提供。連日行列のできるランチは5~10種の魚が日替わりで登場(1000円)。ご飯は自分でおかわりするというスタイルも珍しい。夜は気軽に入れる居酒屋で、2階の座敷を含めると70席あり、宴会の場としても重宝される。おまかせ刺身盛り合わせ¥1800、まぐろのかま照焼¥1200など。
港区麻布十番1-6-5
TEL:03-3401-7959
11:30~14:00、17:00~22:00(LO)
無休