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十番ばなし

麻布十番の店主が語る 十番ばなし #014 「和処 きてら」 佐々木 生剛さん

「きてら」とは、 「どうぞお越し下さい!」 という願いの気持ちを表わす、 和歌山の方言。

 

 

2011年11月15日に開店した『和処 きてら』は、2014年4月1日に、生まれ変わりました。 総合プロデュースを手掛けていた佐々木生剛さんが東京に常駐、自ら店主を務め、本格的に手腕を発揮し始めたのです。

 

山口県で生まれた佐々木さんは中学・高校時代を大阪で過ごした後、神戸で料理人としての人生を歩み始めました。約10年後には「紀尾井 なだ万」(ホテルニューオータニ内)に移り、料理長を務めるうち、手腕を認められて横浜ニューグランドホテルを皮切りに幾つかの新興ホテルでレストラン部門の立ち上げに関わるなど活躍を続け、やがて和歌山県の「海南ロイヤルパインズホテル」の総料理長を引き受けることになりました。

 

食材の買い付けに訪れた田辺市の市場に掲げられていた「きてら」の看板に意味も解らず惹かれたことが、すでに超一流の料理人として地歩を固めていた佐々木さんが更なる進化を遂げ、独自の境地に至る道程の一歩となりました。

 

その歩みに拍車をかける人物が、現われます。
有田市の西端、紀伊水道に臨む初島の広大な土地に展開する石油プラントの一角を占める企業(東亜ドラム油業株式会社・アコモ株式会社)の代表者、橋本拓也氏です。
元々“ものづくり”に関心を寄せていた橋本氏は事業の第二の柱として農業に着目、和歌山県・静岡県に自社農園を設置し、様々な食材の生産を始めていました。やがて、それらの消費地として東京に 狙いを定め、拠点ともなるアンテナショップを麻布十番に設けることを検討します。
そして、遠大な構想の成功に欠かせない人材として浮かび上がったのが、贔屓にする『海南ロイヤルパインズホテル』の総料理長であり、自身の友人でもある佐々木さんでした。
橋本氏からアンテナショップの総合プロデューサー就任の打診を受けた佐々木さんにとって、その申し出は、“渡りに舟”だったようです。

 

 

 

 

麻布十番では、儲けません! 続けられれば、それでいい。

 

 

―佐々木さんは『和処 きてら』で、どんなことを実現されようとしておられますか?

 

目指していることは「日本料理の伝承」と、「人材の育成」です。
和歌山で生産される安全・新鮮・美味しい食材を余すところなく活かして提供するとともに、それを担える料理人を育てて、新たな働き場所に送り出していきたいと願っています。
そのためには、とにかく地元の皆様に末永くご愛顧いただける店であり続けたいし、そのための努力を惜しまない覚悟で臨んでいます。

 

 

―その努力は、色んなところに表れているようにお見受けします。最も印象的なのは価格設定ですが、他にも「マルシェ」の運営や豊富なアラカルト・メニューなど…

 

提供させていただくものは本格的な日本料理であり、或いは創意工夫を加えたオリジナル料理であるとしても、頂戴する代金は“中の上”に設定しています。身の丈を知り、肩肘張らず、お気軽に何度でも足を運んでいただける“都合のいい馴染みの店”でありたいからです。
そして、お客様との交流を図る中で様々なニーズを知り、可能な限りそれにお応えしたいと願っています。例えば『今日は他で飲んできたから、出汁巻と味噌汁とご飯だけで!』というのも、『巻寿司と味噌汁だけ!』でも、『うどんだけ!』でもOKですし、事前にお申し付けいただければメニューにないものでもご用意しています。お子様用に、ハンバーグ付きの弁当とか。
「マルシェ」も、その一環と考えています。他では購入することが難しい、本当にお勧めできる和歌山県特産の食材や食品を店先で販売(季節限定)していますが、売上が目的ではなく、お客様とのコミュニケーションを得られることが何よりも有り難いと思っています。
地元の皆様への貢献を第一に心掛け、そこから得られるものを次の事業に反映させ、成長していきたい。麻布十番に育てていただくのですから、稼ぐ事業は、他所でやります。

 

 

―麻布十番商店街にとって真に貴重な貴店の、益々のご発展を楽しみにさせていただきます。最後になりますが、佐々木さんは、この街に、どんな印象を持たれていますか?

 

これまで様々な土地・街で仕事をして参りましたが、麻布ほど特殊な街は、絶対に他には無いと感じています。「物事を成し遂げた、特別な方々が住む街」、「人と人との和を大事にする大人の街」、「真面目に商売していれば、必ず応えてくれる街」、そして…「いつか私も住みたい街」です。

 

 

(文:山田眞裕)

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和処 きてら

由緒正しい日本料理を手頃な価格で気軽に
味わえる、嬉しいお店。懐石コースは6,400円から14,000円。単品メニュー・地酒・持ち帰りメニューも豊富。昼御膳も1,600円の和定食をはじめ、値打ち感いっぱいの、充実のメニュー。何よりも有り難いのは、その日の気分やお腹の減り具合に応じたリクエストに、柔軟に対応してくれる懐の深さ。事前に相談すれば、メニューに無い料理でも可能な限り作ってくれる。親子丼・京風うどんなど、本場の老舗を超える絶品が味わえる。
住所:〒106-0045港区麻布十番3-6-9
電話:03-6809-4867
営業:ランチ 11:30〜14:30
   ディナー 18:00〜23:00
定休:月曜日
»公式サイト内お店情報はこちら
»自社サイトはこちら

 

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