麻布十番の店主が語る 十番ばなし #018 「崇文堂書店」 斉藤 光男さん 嶋田 和久さん | 麻布十番商店街

十番ばなし

麻布十番の店主が語る 十番ばなし #018 「崇文堂書店」 斉藤 光男さん 嶋田 和久さん

崇文堂は麻布十番駅の地下鉄出入口からすぐの場所にある、麻布十番商店街で唯一の書店。2016年1月、同店から『麻布十番へようこそ。』というタイトルのガイドブックが発刊された。約60軒の飲食店に加え、神社・仏閣などを紹介した充実の麻布十番ガイドで、この本を一人で制作したのが店の4代目・嶋田和久さん。祖父でオーナーの2代目・斉藤光男さんとともに、崇文堂の歴史と現在、そしてこれからについてうかがった。

 

 

 

夢は麻布十番の観光立国

―崇文堂の前身は出版社だったそうですね、今に至る経緯をお話しいただけますか

 

斉藤:私の生まれが大正8年で、その頃から父が神保町で崇文堂という小さな出版社を経営していました。主に実用書を出版していて、私もその仕事を手伝ってたのが、戦争が始まって兵隊に行って。出版社のほうは紙がない、物資がない状況で何もできなくなり、ストップしてしまったんです。本も戦争で焼けちゃってね、資料なんかもほとんど残ってないんです。 それから母は戦前から麻布十番で書店を始め、この場所には昭和3年に来ました。私は終戦後に手伝い始めて、そこからは家族を中心にやっています。本屋は界隈に4,5軒あったのが、今、1軒になってしまいました。

 

嶋田:僕は8年前に継ぐ以前は、旅行会社に勤めていました。たまに店を手伝っていると、「この店なんかつぶれそうだな」と危機を感じて。当時はこの本屋がなくなっても「まあいいや」くらいに思ってたのが、いざ店がなくなると思うと、自分が生まれ育った所だし、「何とかするか」という気持になったんですね。 もともと店にパソコンを置いていなかったので、当初はインターネットを利用して情報を調べることができず、ベストセラーの本や話題の本を置いていないという状態で、今時の本屋はそれじゃダメだろうと…。

 

 

―それからパソコンを導入して崇文堂を変えていき、今回ガイドブックを企画・制作したわけですが、これにはどんな理由が?

 

嶋田:まず、出版不況と呼ばれる時代ですので店のこれからのために何かを始めなければという思いがありました。そして旅行会社を退職するときに、以前から利用してみたかった世界一周航空券を購入して世界中の約300の書店を巡ったときにいろいろなタイプのガイドブックがあるのを知って、いつか自分でもつくりたいと思っていたんです。それと店でもお客様から「麻布十番のお店が載ったガイドはないか」と聞かれることが多かったんですよね。じゃあ自分で作ってみるかということで。 何年か前に、崇文堂の戦前の出版物を古本屋さんを探し回って40冊ほど買い集めたことがありました。「うちのひいじいさんはすごかったんだなぁ」という尊敬の念があったので、今回70年の時を経て出版できたことは自身にとってもすごく喜ばしいです。

 

 

―70年ぶりに出版社が復活するなんて感慨深いですよね

 

斉藤:それはうれしいですよ。自画自賛のようですが、大したもんだと思ってます。私は全国の書店が加盟している日本書店商業組合というのに長くいましたが、これだけの本を出している商店街はそれまでおそらくなかったんじゃないかと思います。

 

 

 

 

地域のニーズに応える書店に

―活字離れも進み、出版業界は今大不況です。近くの六本木ヒルズには競合店のツタヤ トウキョウ ロッポンギもあります、そんななかで崇文堂はどんなことを意識して運営していますか

 

嶋田:ツタヤができたときや麻布図書館がリニューアルオープンしたときは、売上に影響もありました。さらにアマゾンや電子書籍の台頭もあって、5~10年後には、大手チェーン以外の書店はなくなるのではないかと思ってます。実際はわかりませんが少なくともそう意識して仕事に取り組まないといけない状況だと思っています。今は書店という形態を維持しつつ、従来の営業内容をどういう風にシフトしていくかを考えていて、ガイドブックの制作もその業務の一環ですね。 崇文堂は、地域や商店街の人たちが求めるものに常にアンテナを張り、品ぞろえをしようというのがベースとしてありますけど、それだけではなくベストセラーはもちろんテレビ番組で紹介された本や映画化・ドラマ化・アニメ化などの情報をいち早くキャッチして、なるべく早く店頭に置くように心がけています。 接客面では昼は地元のおじいちゃんおばあちゃんが多いので、例えばテレビで紹介された本を書名がうろ覚えで買いに来ても、「司会は誰でしたか、どんな番組でしたか」と話しながら、諦めずに一緒に本を探し当てます。一人一人のお客様の本の好みなどをしっかり覚えて、気軽に来店していただき本のことをたずねられたらきちんとお応えできる。 大型店にはないそんな心許せる感じの街の本屋さんになっていきたいですね。

 

 


―地元育ちの嶋田さんらしい心遣いですね。では最後に、街に対する想いを聞かせてください

 

麻布十番の街は、来客数も駅の昇降者数もどんどん増えています。夢はこの『麻布十番へようこそ。』で、皆さんに広く街を紹介して十番に来てくれる人、十番を好きになってくれる人を増やし、この街を観光立国することです。年に一回、いずれは年に二回、本を刊行して、街に貢献していこうと思っています。

崇文堂書店

 

崇文堂書店

麻布十番商店街で唯一の書店。店内には雑誌や単行本、コミックなど多ジャンルの図書がそろっている。嶋田さんのおすすめを並べた「俺の棚」コーナーには、現在『衝撃の死因大全』『無料で楽しむ東京フリーガイド』などの書籍が、笑える解説つきで陳列されている。こまかな本の相談や要望などを気軽に話せる雰囲気も大型店では得難い魅力。
住所:港区麻布十番1-11-11電話:03-3583-5658
営業:10:00〜20:30 日曜日12:00〜20:00 定休日なし
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