麻布十番の店主が語る 十番ばなし #004 「きものアートすなが」須永 達雄さん | 麻布十番商店街

十番ばなし

麻布十番の店主が語る 十番ばなし #004 「きものアートすなが」須永 達雄さん

この街で長く信頼される存在として

 

 

―これから夏に向けて浴衣を着る人が増えて、こちらは忙しい季節になりますね。

 

そうですね。夏になったら十番の納涼まつりや花火大会、屋形船に出かけるお客さんが増えます。浴衣を購入して、こちらで着つけをサービスして、そのまま屋形船や花火大会に出かけていく方なんかも結構おられますよ。

 

 

―買ったその場で着付けをしてもらえたらうれしいですね。和服はなかなかハードルが高くて…

 

夏は暑いってイメージを持たれているけど、本当の着物って夏涼しいし、冬あったかいものなんだよね。きちんと着ないと暑苦しくなる。歌舞伎の役者なんて腰で着るから恰好がいいよね。女形の人が女性よりもきれいに着るっていわれるのは、腰で着ているからじゃないかな。着物は腰ひもを使ってきちんと着れば、本当に楽なんです。若い人にも着物にもっとなじんで欲しいというのもあって、十番の商店街でも7月7日を「着物の日」にしようか、という話も持ち上がってるんですよ。



 

―和服姿が麻布十番に増えるのは楽しみですね。「きものアートすなが」は創業130周年だそうですが、老舗店を継ぐのは責任も大きかったのでは

 

最初の屋号は須永呉服店で、僕は3代目。昔は近くに(芸者さんのいる)三業地があってね、そういう意味ではこの辺りは粋な、着物と縁の深い街だった。戦後すぐの頃は、呉服店が5、6軒あって、自分が継いだバブルの頃は2、3軒になり、今はうちだけ。やっぱり老舗という意識はあったよね。大学二年の時に親父が死んで、その後、母から店を継いだ時、高級な呉服店に変えたんだけど、お客さんは入って来ないし、セールスにも行かなきゃで、すごく大変で。売掛金は増えるし、バブルも弾けて、このままではいけないと。それで十番には外国人も多いから、和の小物に力を入れて、店頭売上げを増やそうと改装した。その時に商品と店名が合うよう“きものアート”にしたのが、今から27,8年前かな。改装は4回した。その後、その意識がなければ、ただ一軒、生き残れなかっただろうね。

 

 

―若くして3代目となったわけですが、着物の知識は呉服店の息子として自然と身についていたんですか

 

継ぐ時は経営のことも着物のことも全然知らなかったから、とりあえず大学を卒業して、京都の呉服問屋で修行した。でも昔は分業が普通で、糸は糸屋、柄は型屋、染は染屋といった具合で、結局何もわからなかった。東京に帰って、きものの専門学校に2年通ったら、僕以外はみんな女の人! で、遊んでしまったものの、授業では一番前に座って、勉強もかなりしたね。そこで着物のことが初めてよくわかった。

 

 

―長く商売を続けていらして、心がけていたのはどんなことでしょう

 

 信用を保つことかな。仕立てはもちろん、洗いもリフォームもすべて、腕のいい職人さんにお願いする。それに子供の踊り用の帯とか、浴衣の下の帯とか、特殊な商品も揃えておく。そうすれば、「すながさんに行けば必ずある」と認識されてそれが信頼につながる。それとうちは外国人のお客さんが7割だから、30㎝の雪駄なんかも仕入れるし、女性用のXLのゆかたを特注もしてる。夏に冬の物なんか普通は置かないけど、例えば日本が夏ならオーストラリアは冬でしょ。「綿入れの半纏ある?」と夏に言われることもある。英語も店には必需品だから習ったし、英語版パンフレットも作りました。

 

 

 

 

これからの着物と十番の街は

 

 

―着物は今、着方も使い方も変わってきているように思います。どう感じてらっしゃいますか

 

今は飲食店の人も着物を着る人が少なくなって、うちのお客さんもガラリと変わったよね。そりゃあ若い人の着方で気になることはあるけど、どんな着方でも、着てもらえるならその方がいい。でもこの前、アイドルが浴衣を左前にして着ていて、あれにはびっくりしたけどね。
若い人にもっと着物になじんでもらいたいから、麻布十番で「着物の日」を設けようかとか、着付け教室をしようかとか色々と考えています。

 

 

―須永さんは商店街の理事長でもいらっしゃって、長く街を見てきたわけですが、印象に残っている出来事は?

 

 約40年前まで商店街にアーケードがあったのを撤去したこと。その頃はアーケードの上に住居の窓があって、そこに布団なんか干してたんだよ。アーケード街にビルを建てると、その場所だけ屋根が途切れちゃってた。でもどんどんビルは増えるし、アーケードがあると木が一本も植えられない。取り外そうという話になって、商店街で福山や北海道までアーケード街を見に行って、反対派を説得したり、色々と努力しました。それで撤去する時には、電線だけじゃなくトランスも地下埋めにして、木も植えて。銀座のみゆき通りでさえ、電線はないけどトランスはある。でも十番は両方ない。あの時はほんとに自分も含め、役員は頑張ったと思う。

 

 

―街の美観を守るために尽力したんですね。そんな十番の街の魅力はどこでしょう。今後どんな街になればいいと思いますか

 

魅力は…人情かなあ。いい人が多い。外国人が多いと言っても、みんな住んでいる人だから落ち着きがある。今後は衣食住が完結している街になればと思います。それと通過車両をなくして低速の自動車だけにして、歩道と車道の高低差もなく、車と人が一緒に通れる街にしたい。ずっと住み続けられる、いい街にしたいね。

 

 

 

 

きものアートすなが

 

きものアートすなが

麻布十番商店街唯一の呉服店。紬や小紋など、普段使いの着物とオリジナルのバッグやティッシュケースなど、海外への土産にぴったりの美しい和小物が充実。売れ筋はガーゼの寝巻き。吸湿性があり、やわらかいのが外国人にも大人気。
港区麻布十番2-1-8
TEL:03-3457-0323
11:00~20:00火曜休
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