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8月特集 |宇野亜喜良氏と振り返る納涼まつり

国内有数「麻布十番納涼まつり」の歴史を振り返る

2日間で30万人以上が訪れる納涼まつりは、国内の商店街が主催するイベントの中でも群を抜いた盛り上がりを毎年みせていますが、昨年に続き今年も新型コロナと東京2020大会の影響により中止となりました。

 

都心にありながらもかつては近隣に駅がなく、陸の孤島と呼ばれていた麻布十番は、どのようにして納涼まつりを大成功へと導いたのでしょうか。毎年ポスターやうちわなどに使用されるキービジュアルをデザインしている宇野亜喜良氏と、麻布十番商店街振興組合の平野一夫理事長が、半世紀以上にわたる納涼まつりの軌跡を振り返ります。


 

昔ながらの情緒を残す町の祭りに添える遊び心

                           宇野亜喜良 氏 デザイナー/イラストレーター

 

ポスタービジュアルとともに振り返る  

 

 

 

麻布十番は時代にあわせて常に変わりながらも、どこか下町の風情を残しているところがとても気に入っています。以前からこの町に事務所を構えていた縁で、1999年に初めて納涼まつりのデザインを依頼され、大好きな麻布十番の発展にぜひ貢献しようと引き受けました。当初は、自分の作風が伝統ある町のイメージに合うだろうかという不安もありましたが、かれこれ20年以上も続けています。子ども歌舞伎、七夕まつりなど毎月のように多様な催しを行なう麻布十番は、季節の移ろいをとても良く感じられる町です。納涼まつりの依頼を受けるたび「もうそんな時季になったのか」としみじみ思うようになりました。

今回、改めて過去の自作を見返し、初期の頃はとにかく夏をイメージして描いていたのを思い出しました。麻布十番の営みに呼応するかのように作風もだんだんと変化し、最近ではかなり自由にやらせてもらい、商店組合のみなさんの懐深さを感じています。

 

                               2018年デザイン

 

2018年のデザインでは、江戸時代と現代の女の子が糸電話で語り合う情景を描写し、過去と今をつなぐイメージを落とし込みました。ただ糸が途中でたるんでいるので本来なら通話はできないわけですが、それも一興だろうとこのデザインに決めました。

 

 

今年のデザインは、松尾芭蕉の句を少女の浴衣に描いたのですが、すべての文字が異なるフォントなのですぐには読めないかもしれません。これには、足を運んだお客さんが「どう読むんだろう」と考えながらポスターの前にしばし滞留し、少しでもこの町の印象を深めてもらえればという願いも込めています。このように納涼まつりのデザインは、ちょっとしたユーモアや謎かけめいたことなど遊び心を添えながら自分でも楽しんで制作しています。また、十番稲荷に石像が置かれている「火消し蛙」も少女の隣に描きました。かつてこの辺りに大火が起きた時に口から水を吹き上げ、武家屋敷を守ったと伝えられるこの蛙ですが、少女に蓮の花をプレゼントする情景にしたてちょっとしたラブストーリーにアレンジし、なおかつコロナ禍が早く終わり、元の世界に戻って欲しいという願いも込めました。

 

来年「納涼まつり」への抱負

僕自身、小さな頃からお祭りが大好きだったので、来年はぜひとも本来の祝祭性に満ちた祭りの開催にこぎつけ、自分が描いたうちわを持った人たちであふれる、活気に満ちた麻布十番をぜひともまた眺めたいと心待ちにしています。

 


 

納涼まつり再開で元気な麻布十番のアピールを

                                                        平野一夫 氏 麻布十番商店街振興組合理事長

 

陸の孤島だった商店街の大躍進

江戸時代から続く夏祭りが「納涼まつり」と名を変えたのは1960年代中頃で、初めは近隣の方々だけが訪れるような小ぢんまりとしたものでした。やがて大名行列やサンバ大会など趣向を凝らした催しを次々と取り入れて盛り上げようと奮闘した結果、30年ほど前にはとてもにぎやかな祭りに成長していました。当時、私が所属していた青年会もひたすら頑張ったのを良く覚えています。まだ麻布十番駅はなく、この界隈が陸の孤島と呼ばれていたことを考えれば大成功と言えるでしょう。また10年ほど前まで行っていた、近隣の40ヶ国近い大使館による国際バザールも思い出深いイベントです。大使館職員が本場の料理をふるまうとあって大盛況でしたし、地元で国際交流ができたことも貴重な経験でした。

 

 

 

 

 

個性ある露店が特徴の「納涼まつり」

今も続く催しではなんといっても加盟店による露店が好評です。ミシュランで星を獲得したり、グルメ雑誌の常連だったりといった名店が自慢の逸品をリーズナブルな価格で出しているので、食べ歩きにはうってつけです。他にも網代公園の子ども向けブース、地域の方が演奏を披露するパティオ広場のSTAGE 10-Bang、日本全国の物産展・おらが国自慢など、毎年、盛りだくさんな内容をご用意してきました。

 

来年の「納涼まつり」への意気込み

  私は2年ほど前から理事長を務めていますが、就任直後からのコロナ禍に加え、東京2020大会に伴い警察の警備協力を受けられない状況となり、納涼まつりは中止せざるを得ませんでした。楽しみにされていたお客様に対して申し訳なく思うと同時に、私たち主催者も残念でなりません。来年こそは、対策を万全に講じたうえでこれまで貯めてきた2年分のエネルギーを注ぎ、元気な麻布十番をアピールしたいと思っています。また現在も商店街一丸となりお客様の安全を第一に考えておりますので、季節ごとの催事やふだんのお買い物でぜひ麻布十番商店街へ足を運んでいただければと願っています。

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