―圧倒的な商品数ですね。どんなアイテムがどのくらいの点数あるのでしょう
色違いやサイズ違いも入れて数えると、4万点くらいはあるんじゃないかな。男性・女性・子供の肌着や靴下、衣料、タオル、寝装品、スリッパなども置いています。衣料品店として当然あるべきもの、期待されるものを置いていたら自然とこの数になりました。規模も商品数も港区内の商店街の小売洋品店では最大かもしれません。
―明治時代創業ということですが、当時はどんな商品が置かれていたんですか
曾祖父が開業した明治42年当時は、家庭用品を扱う店でした。この辺りは、すだれやござなんかをお屋敷に納める職人さんの街だったんですよ。洋品店になったのは戦後で、最初は二間半くらいの間口だったのが、今は八間半くらいあるかな。麻布十番は戦前戦後あたりは周りもみんな小さな店で、それがぎっしりと250軒も並んでて。今だって360店ほどだから、かなりの数だよね。
―引きも切らずにお客さんがいらっしゃいますよね。長く人気店を続けているのはどんなところに理由があると思いますか
まあ運がいいのもあるけど、店主が働きものだったとか、色んな条件が揃って代々続けられたんでしょう。私の場合は父親が商売熱心で、その背中を見ながら育ったんだね。お客さまと直に触れ合えて、喜んでもらえるのが嬉しいから、私は仕事が楽しんでやれています。店に長時間いても苦にならないし、仕事の効率化や内装を考えること、工作するのも好きだし。
でも何より大切なのはお客様本位で考えること。ブティックとは性質が違うから、自分の主張を押し出した商品を置いてもね…。ここに行けば確かな品物があり、無駄足にならないと感じてもらいたい。接客に関しても「一見のお客様だから」とは考えない。だから横浜や千葉、埼玉など遠くからいらっしゃって新しいお客様になる方も少なくないですよ。
―遠くからいらっしゃるのは他の店にはないものがあるからですよね。どこが違うんでしょうか。また売れている商品についても教えてください
婦人物のスラックスなんかはサイズが6Lまであって、かなり種類が多いですよ。そうですね祭り用品は、安いからとわざわざ本場の浅草から買いに来る人もいるくらいで、揃っているといわれます。これから9月にかけて、秋祭りのための商品がさらに増えます。
売れてるのは…、レッグウォーマーは冬物だけだと思われがちだけど、絹や綿素材のものもあって、夏もエアコンで足が冷えるから、と女性によく売れてますよ。そして外国の方が多くいらっしゃるので、夏に冬物、冬に半袖が売れるのも当たり前だから、オールシーズンのものがいつも買えるというのは大きな特徴かな。
―お店とともに街の特徴がなんとなく見えてきますね。西本さんにとって麻布十番はどんな街ですか
地下鉄ができる数年前から、この街をどうしていくかを商店街で話し合ったんだけど、時間の制限なく朝まででも話そうと、長い時間をかけて考えました。「ほっとする街、微笑みの街、住み続けたい街」をキャッチフレーズに、それに沿って街を作っていって。沿線の大きな街とは戦をしても仕方がない。無理に外から人を呼び込むのでなく、来た人を大事にしようということになった。気軽にお客様がお買い物できるようおもてなしをしているんです。目にはすぐに見えなかったけれど、結果的にうまくいっているように思いますね。
―きちんと街づくりがされているんですね。では最後に、これからお店にいらっしゃるお客様へメッセージをお願いします
ここにはほかにはない、あなたにきっと合うものがあります。手に取って、試着して、納得して買っていただけると思いますよ。そしてコミュニケーションを大切にするのは、麻布十番商店街のスピリッツでもあると考えています。それを体感してみてください。
総合洋品 ニシモト
創業100年余の、ノスタルジックな雰囲気も魅力の衣料品店。見せる収納と呼びたくなる店内には、多様な商品が陳列されている。子供用品や祭り洋品も他にはない充実の品ぞろえ。登山が趣味の西本さん、先日は富士山の3300m時点まで行き、日帰りするという強行登山に挑戦。百名山では現在69まで制覇。
港区麻布十番1-11-13
TEL:03-3583-6471
10:00~19:30火曜休