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十番ばなし

麻布十番の店主が語る 十番ばなし #013 「文房具のながとや」 横溝 純一さん

美しい日本の贈答文化を 絶やさずに伝えていきたい

 

 

 

―「長門屋商店」の名称の由来を教えてください

 

戦前、祖父とその兄がこの近くの水引店に丁稚奉公をしていたのですが、兄弟で独立して開業しようと決めた矢先、太平洋戦争がはじまりました。二人とも戦地に行きましたが、兄のほうは戦死してしまったんですね。それで祖父は、兄が乗船していた戦艦「長門」の艦名を屋号にし、兄の遺志とともに創業したんです。最初は、掛け紙や水引などを街道沿いの商店に売り歩いて卸していて、その後に店舗とのし袋の製造を始めました。

 

 

―そんなドラマが名前にあったんですね。今は製造、卸、販売を手掛ける長門屋商店ですが、大切にしていることはなんですか

 

製品を開発するにも仕入れるにも常に現場にヒントがあると思っています。お客様とのやりとりの中からニーズや商品開発のヒントを探っていく。そこから生まれたものはやはり机上の空論とは違い、売れるものになる。どの事業の従業員にも常々「現場に足を運びなさい」と言っています。そしてお客様に喜んでいただけるものはフレキシブルに取り入れる。店の商売はどうしてもマンネリ化しがちですから、トレンドや需要を読み取り、商品や陳列に反映して新鮮味を持たせ、お客様に発見があるような店づくりを目指しています。

 

 

店長の青木さん(右)と湯本さん(左)。 二人が店舗とお客さまをつなぐお店の顔となっている。 商品のセレクトや企画コーナー等、常にお店が フレッシュなようにアイデアを出し合っている。

店長の青木さん(右)と湯本さん(左)。
二人が店舗とお客さまをつなぐお店の顔となっている。
商品のセレクトや企画コーナー等、常にお店が
フレッシュなようにアイデアを出し合っている。

―バラエティに富んだ商品群ですよね。そのなかでも商品やホームページにはどこか和のテイストを感じます。意識してらっしゃるのですか

 

そうですね。私の祖母が女学校の時代には水引を結ぶ授業があったそうですが、その頃の贈答といえば、海苔などの日持ちのする乾物や水菓子(くだもの)などに掛け紙をかけ、水引を結ぶのが一般的だったそうです。それが時代とともに祝儀袋にお金を入れる習慣に代わりましたが、日本では“裸で物を差し上げない”という文化がずっと大事にされていますよね。他の国にもありますが、そういう日本の良い文化は継承していきたいんです。今は慶事や弔事のかたちも多様化しているし、SNSの発達などでコミュニケーションの方法も変わりましたが、対面で「気持ち」を手渡しすることはこれからも無くなって欲しくないと思うんです。

 

 

 

 

 

ほどよく刺激があるのが 麻布十番の魅力

 

 

 

―麻布十番の街にはどんな思い出がありますか

 

今は他区に住んでいますが、昭和38年に麻布十番で生まれて育ちました。だから幼なじみが今も多くいます。子供の頃は、小さな年齢差や男女の区別なく、みんな一緒に駆けずり回って遊んでいました。小学校の高学年の頃に、母の田舎でカブトムシを100匹くらい捕ってきて夏の納涼まつりで店と店の隙間で、友達と一匹100円で売ったりしたんですよ。今ではそんな隙間もなく、きっちり運営されているのでそんな事したら怒られちゃいますけど、とてもいい経験でした。また秋祭りの時には各町会が神酒所(みきしょ)を設営するんですが、そこに近所の友達と泊り込んで朝まで遊んだりしたのも楽しい思い出です。十番の街には、売ったり買ったりということがいつも身近にあり、商売と言うものを自然に学んだ気がして、この街に感謝しています。

 

 

―聞いただけでも楽しそうな子供時代ですね。麻布十番が他の街と異なるのはどこでしょう

 

まず街の人が優しいように感じます。どこか人としてゆとりがあるというか、豊かな感じがあるのが特性ではないでしょうか。それは住む人と商売をする人のバランスがちょうどいいからかもしれません。また外国の人も多いので、異文化を受け入れる中で刺激が生まれ、人を寄せ付ける魅力になっているのかもしれません。

 

 

―ほどよい刺激が街の魅力なんですね。ではこれからの麻布十番、そしてながとやについてお聞かせください

 

これから更に高齢化していく社会に向けて、福祉・介護の分野に高い必要性を感じます。今後は介護の分野で、世の中のお役に立てる仕事に取組んでいきたいです。実際、店のスタッフは福祉用具の専門相談員の資格を取り、福祉用具を取り扱う知識を身につけてもらいました。それを今後の事業に生かして行きたいと思っています。
街のほうは、人・自転車・クルマの共存を考えた街づくりが必要だと思っています。交通にある程度の規制を設けたり、歩道・車道のフラット化など、歩行者が安心・安全にお買い物していただける街にするため、微力ながらこれからも地域活動に協力していきたいです。

 

 

 

文房具のながとや

 

文房具のながとや

文具や事務用品をはじめ、ユニークな玩具類や和風小物、グリーティングカード、雑貨などバリエーション豊かな品ぞろえ。犬VSネコの商品など、毎回趣向を凝らした企画コーナーも楽しい。また15色以上、サイズや厚さなども幅広いカラーペーパーや祝儀袋などの「ながとや」ブランドの商品は全国でも知られている。
(株)長門屋商店
港区麻布十番1-5-25
TEL:03-3403-5619
営業:平 日 9:00~19:00
土曜は不定期10:00~19:00
日・祝 休
»店舗情報はこちら

 

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