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麻布十番商店街の国際交流

麻布十番は、多くの大使館が居を構える国際色豊かな街です。なかでも、麻布十番商店街と長いお付き合いなのが、リトアニア大使館です。研究者として日本文化に造詣の深いオーレリウス・ジーカス駐日リトアニア特命全権大使に、交流の歴史や麻布十番商店街についての思いなどをお伺いしました。

 

 

オーレリウス・ジーカス 駐日リトアニア特命全権大使
1978年生まれ。家族は妻と娘。複雑な言語である日本語に興味を持ち、金沢大学や早稲田大学に留学、日本文化について研究する。2022年5月より現職。好きな日本の作家は、村上春樹、安部公房。


リトアニア大使館と麻布十番商店街とのつながり

編集部:麻布十番商店街と交流がはじまったきっかけを教えてください。
ジーカス大使:麻布十番商店街やコミュニティとの交流がはじまったのは10年ほど前。当時の大使が歯の治療を受けた際、担当の歯科医を通じて商店街との関係ができたと聞いています。

 

編集部:麻布十番商店街とはどんなお付き合いをされているのでしょうか。
ジーカス大使:コロナ禍前までは毎年麻布十番納涼まつりに大使館ブースを設け、リトアニアの特産品を紹介していました。麻布十番は大使館が多い街ですが、今年の麻布十番納涼まつりに出店していたのはリトアニア大使館だけで、商店街との強いつながりの証だと誇りを持っています。今年初めて納涼まつりに行きましたが、想像以上の人出に驚きました。準備をする商店街の皆さんの大変さを思うと頭が下がります。

 

編集部:大使館ブースではどんなものを出店されたのですか。
ジーカス大使:リトアニアの伝統的料理やはちみつ、お酒などリトアニア特産の農産物です。料理のひとつが、リトアニアでは夏祭りでよく食べるピンク色の冷製スープ「シャルティバルシチェイ」です。ビーツやケフィア(ヨーグルト)の入った、酸味の利いたさっぱりとしたスープです。また、食べ歩きしやすい「キビナイ」というミートパイも用意しました。
お酒は、地ビールや、はちみつを発酵させて作ったはちみつ酒「ミード」、アルコール度数が40度のリキュールなどを提供しています。「ミード」はワインのような味わいで、何千年もの歴史のある伝統的なお酒です。リトアニア人はお酒が強い人が多く、私もその例にもれずお酒が大好き。日本酒もたしなみます。

 

編集部:ぜひ味わってみたいですね。商店街との関係はほかにもありますか。
ジーカス大使:この秋に、稲荷神社の例祭でお神輿を担ぎました。重たいのは言うまでもありませんが、そのうえ私は背が高いので他の方と高さを合わせるのに屈まなくてはならなかったので大変でした。一日中練り歩き、翌日は体のあちこちが痛みましたが、楽しい経験でした。神輿は日本独特の文化です。町会ごとの神輿があり、皆で「わっしょい」と声を出す一体感など、祭りの雰囲気も堪えられません。


大使が稲荷神社の例祭でお神輿を担いでいる様子


編集部:お神輿を担いだのは初めてだったのですか。
ジーカス大使:実は大使として赴任する直前に、リトアニアで神輿を担いだんです。大学でアジア文化を研究していたので、神輿を普及させるイベントを私が主催したのですが、麻布十番でまた神輿を担ぐことになるとは……ご縁を感じました。

 

編集部:リトアニアにもお祭りはありますか。
ジーカス大使:季節ごとにさまざまな祭りがあります。有名なのが夏至祭や秋の収穫祭で、民族衣装を着て、輪になって踊ります。日本の盆踊りはゆっくりした動作で主に上半身を使うのに対して、リトアニアでは全身を使ってダイナミックに踊ります。30分も踊ればクタクタです(笑)。


大使とご家族(ご息女が着用されている衣装がリトアニアの民族衣装)


伝統と国際色が融合しているのが魅力

編集部:大使にとって麻布十番商店街はどんな場所ですか。
ジーカス大使:麻布十番は伝統文化と、たくさんの大使館に代表される国際的な雰囲気とが融合しているのが魅力だと思います。東京は災害や戦争などで何度も破壊され、伝統が絶えているところも少なくないなか、麻布十番には江戸時代から続く伝統文化が息づいていることに感動を覚えます。麻布十番商店街にはたいやきの「浪花家総本店」や「たぬき煎餅」など何代も続く老舗が残っています。祭りもそうですし、一般市民が活動する消防団にも江戸時代の町火消の流れが生きています。商店街の方たちから、麻布十番の伝統について教えてもらうことも多いです。

 

編集部:商店街の人たちとも普段から交流されているのですか。
ジーカス大使:大使館がせっかく麻布十番にあるのですから、地元の人たちと交流しない手はありません。一緒に飲み食いをすることも多いですし、我が家に招待して、リトアニアのリキュールや料理でもてなすこともあります。互いを理解するためには、交流することが大事です。

 

編集部:麻布十番商店街で好きなお店や場所はありますか。
ジーカス大使: たいやきの「浪花家総本店」は2人の娘も大好きで、1時間くらい並んで買っています。娘たちはクールジャパンのファンで、ラーメンやとんかつなど日本の食文化にもなじんでいます。私もラーメンが大好きです。全国各地のラーメンも食べ歩いていますし、麻布十番にもお気に入りの店があり、週に1回は必ず食べています。「きのくにや麻布十番店」のお弁当も好きです。そのほか韓国料理や中華料理など麻布十番ではいろいろな国の食文化に触れる機会も多いですね。また、お酒好きなので、商店街のいくつかのお店でよく日本酒を購入しています。
それから、坂道も好きです。鳥居坂や仙台坂など、坂の名前も趣があって、麻布十番の雰囲気をよく表していると思います。

 


編集部:麻布十番商店街と、今後どのようにかかわっていきたいと考えていますか。
ジーカス大使:まずは、これまでの良好な関係を維持し、活動を続けていきたいです。加えて、たくさんの大使館がある麻布十番ならではの特色を生かして、国際フェスティバルを開催できるといいなと思っています。伝統と同時に、国際的な雰囲気を併せ持つ街ならではのイベントで、互いの文化を紹介できれば、麻布十番の魅力も増すのではないでしょうか。世界にはさまざまな文化があります。市民どうしが交流し、相互理解が深まれば、平和にもつながると確信しています。麻布十番商店街の皆さんには日頃からお世話になっているので、麻布十番で最も地元との関係が深いと自負するリトアニアが先導役となって進めていきたいですね。

 

編集部:実現するのが楽しみです。今日はありがとうございました。

 

麻布十番商店街 平野理事長より

麻布十番商店街の周りには大使館が多く、そのおかげかとても外国の方が多くいらっしゃいます。以前は商店街のお祭りにも20を超す大使館が参加し、国際バザールなどを開いておりました。今でも除夜の鐘や秋祭りで神輿を一緒に担いだり日本文化に触れていただき、国際交流と言うよりは国境越えたお付き合いをしていただいている国もございます。地域の小学校でも国際学級が増え、今子供たちにとって外人と言う言葉もイメージも昔とは変わってきているように思います。麻布十番商店街で食事やお買い物をして催し物に参加して、街の人と触れ合い、日本の文化を経験していただくことが国際交流になっていると思います。ぜひこの地域になれ親しんでいただきたいと思います。そして互いに尊重し合うことが大事だと思っております。

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