麻布十番の店主が語る 十番ばなし #028 「あん梅」 藤井 哲夫さん | 麻布十番商店街

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麻布十番の店主が語る 十番ばなし #028 「あん梅」 藤井 哲夫さん

麻布十番駅出口のすぐ近く、店頭で干物を販売する《あん梅》がある。昼は干物や粕漬けの定食、夜は食事やお酒を楽しめる。港区生まれの干物というのも話題を呼んで、3年前には《ぎん香》という名で干物入りのお弁当屋さんも開店。麻布十番に開業して40年が経つという《あん梅》と《ぎん香》を運営する、株式会社 夢やの代表・藤井哲夫さんに40年の歴史と将来、街との関係などをうかがった。

 

 

 


 

 

―創業40年になるあん梅の歴史を教えてください

 

勤め人だった23歳の時、「鶏口と為るも牛後と為る無かれ」という史記の言葉が頭に浮かんで、起業を決意しました。で、翌日の新聞の3行広告の中で、自宅から電車で乗換なしで行ける店に入ろうと思って、赤坂見附にあった喫茶店で料理修行を始めたんです。でも同期で抜群に料理の腕の立つ人がいて、次に入った洋食屋でも、才能ある同期がすぐに独立して繁盛店をつくって。こんな人ばかりいたら俺は何年経っても料理人はだめだ、と。でも繁盛店はできるかもと思って、親父からお金を借りて独立しちゃった。浅はかだったんですね。
1980年代初頭の郊外型のファミレスが出始めた頃で、最初は三鷹市内で決めたんだけど、物件を見た勝負師の父に「こんな場所で繁盛するわけない」って止められて。次に紹介されたのが麻布十番です。今度は麻布中学だった父が物件も見ないで「十番なら大丈夫」と。その通り、焼鳥と釜飯の店は繁盛しました

 

 

 

―最初は焼鳥と釜飯だったんですね。それが今のようになったのは?

 

一店目が当たったんで、今の干物屋の場所に二店目を出したんだけど、それが見事に失敗し、お金も使い果たしたから1年で閉めちゃった。で、これはまずいぞというところから、紆余曲折があってしゃぶしゃぶ屋を始めたんです。バブル以前のことです。
できた店は玄関開けたらいきなり小上りの座敷がある古風な造りで、経営コンサルタントには「授業員の定着率も悪くなるし、この店は絶対失敗する」と宣言されたけど、後戻りはできないし。ところが民家のような雰囲気も受けて、有名な食の評論家や作家に褒められてひいきにされた。時の総理大臣は相席になるし、大物アーティストを寒い入口の席に座らせちゃうくらい賑わって…。お客様は一流の方ばかりでした。

 

 

 

 


 

―90年代はしゃぶしゃぶ店だったんですね。干物店になったのは…

 

家賃が全部で100万位かかってたんだけど、手狭になったので麻布十番のほど近くにしゃぶしゃぶ屋を移して、その三軒隣にビルを建てたんです。バブルははじけてたけど、「またバブルが来ますよ」って不動産屋にだまされて、借金コンクリートのビルになってます(笑)。
それで黒字にするためにビルを活かそうと考えついたのが、屋上で天日干しの干物をつくること。その時もね、海の近くじゃないとだめだとか、光化学スモッグは嫌がられるとか言われて。でもやってみたらおいしいから自信ができた。素材がよければ凝ったりしなくてもおいしいのが分かってきた。平成16年でした。

 

 

 

―都会で干物をつくるっていう発想は驚きです。次はお弁当屋さんですね。これはいつ?

 

干物屋はネットで始めたんだけど、一尾の半分くらいのサイズでお試しセットを作ったんですね。するとレビューなんかで「お弁当サイズで使いやすい」っていうコメントが増えて、そこからお弁当を作ることに。3年前です。
しゃぶしゃぶ店は東日本大震災の年に閉めたんです。あの時も霊感があるっていう女性に「しゃぶしゃぶ屋、やばいよ」って言われて、建替えのタイミングで店をクローズしようとも思っていたんだけど、早めの2月に閉めたら、3月に震災が起きた。仙台牛を使っていたから、仕入れられなくなってましたね、さらにリーマンショックでどかんといった。

 

 

 

―時代に柔軟に対応して変化してきたんですね。麻布十番の街には40年ずっといらしたわけですが

 

むしろ変わらない人が信じられないね。時代は変わってるんだから、いつまでも同じことやっててもしょうがないって思う。
実は一時銀座にも出店しましたが、サラリーマンの通ってくる街でした。麻布十番は住む人がいて、ハイセンスとかハイソサエティの街とはちょっと違い、下町っぽさもある。それが自分に合っていたんですね。
麻布界隈には坂が多いのも好きで、特に好きなのはカーブが多い暗闇坂。商売も坂道も変化があるのが好きなんです。




―麻布十番の40年の歴史を見るようなお話でした。最後に今後の夢やについてお聞かせください

じつはしゃぶしゃぶ屋さんを再開します。そしてお弁当屋では“麻布十番に駅弁があったら”っていう仮想のお弁当をやります。店を活性化するには街を活性化するのがいいだろうと考えたんです。
それと弁当部門は事業化して息子に譲りたい。今はカメラマンですけどできなくなったら、やればいい。色気があるからレストラン業やったら成功すると思うんです。

 

あん梅

ランチタイムの定食は1.000円~。店頭では自家製の干物を販売している。定食の人気メニューはさばと焼き鮭。おすすめはからすみの粕漬(2,500円~)。お弁当では、さば塩焼き弁当1,200円、高級な牛肉を味噌漬けにした牛みそ焼弁当4,700円まで多種あり。肉と魚が両方味わえるものも人気が高い。

 

住所:港区麻布十番2-19-2
電話:03-5439-6937
営業:11:30~14:30 17:30~22:30
火曜休

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